僕らが知らない90年代の熱狂。雑誌の片隅にあった「テレクラ」は、パチンコにも似た男の美学だった

僕がまだ「よく分かっていなかった」大人の世界

僕がまだ小学生だった頃、夜中のテレビや友達兄が隠していた雑誌の片隅で、時々見かける不思議な言葉がありました。それが「テレクラ」。子供心に「何だかよくわからないけど、大人のディープな世界なんだな」と感じていた、あの独特の空気。ブラウン管のザラついた画面の向こう、電話線一本で繋がる未知の世界に、当時はどんな熱狂があったのでしょうか。

今回は、書庫の奥から発掘した90年代の雑誌を元に、スマホもマッチングアプリもなかった時代の、アナログすぎるコミュニケーションの核心に迫ってみたいと思います。

顔もスペックも関係ない。「クドキオンリー」という名の戦場

当時の雑誌記事には、テレクラをこう表現する一文があります。

「ここでは、ケイオーの学生証もキミがジャニーズ系美少年であることもまったく通用しない。まさにクドキオンリーの世界」

現代のマッチングアプリが、写真や年収、学歴といった「スペック」から始まるのとは真逆の世界。唯一の武器は、自分の「声」と「トーク」だけ。顔も知らない相手を、言葉だけで口説き落とす。そこには、今とはまったく質の違う緊張感と興奮があったことが伺えます。

記事はさらにこう続きます。

「テレクラでのトーク・タイムが終った時点でヤレるかどうかはほぼ決定してるのが特徴だ。つまり、アポイント場所に来てくれた時点で90%はヤレる、のである」

この一文に、当時の男たちのすべてが集約されている気がします。電話一本で約束を取り付けるまでが、すべての勝負だったのです。

1万円で味わう「フィーバー」と「連チャン」

なぜ男たちはそこまで熱狂したのか。その理由を、雑誌は意外なものに例えていました。「パチンコ」です。

テレクラは、パチンコにも似た男の美学

記事によると、当時のコスト感はこうでした。

  • テレクラ(アポ取り):1時間 3,000円
  • 喫茶店(顔合わせ):500円 × 2人分
  • ホテル代:4,000円

合計8,000円。1万円札一枚で勝負できる、大人の遊びとして確立されていたのです。そして、そのプロセスにはパチンコのような射幸心がありました。

「デニーズ等でお話しした後、ホテルに直行―――これはパチンコでいう『フィーバー』に匹敵する。さらにホテル代を女のコが払ってくれたりしたらコイツぁもう『連チャン』級だ」

まさにギャンブル。自分のトークスキルを玉にして、大当たりを狙う。そんな刹那的な興奮が、男たちを公衆電話へと向かわせたのかもしれません。

電話の向こう側で、彼女たちは何を思っていたのか

一方で、電話の向こう側にいた女性たちはどんな人たちだったのでしょうか。記事では、テレクラでアルバイトをする女子大生、Y.C.さん(仮名・当時21歳)の生態が紹介されています。

時給の良さに惹かれて始めたという彼女は、携帯電話と2つのポケベルを持ち、常連客との「テレフォンセックス」をこなしていたそうです。

「『ルミ子(仮の名前)は、いぢわる〜♡』と言ったら、『お姉さまのいやらしい女わ』と果てた。一度お目にかかりたいものです」

そんな生々しいレポートと共に、記事はこう締めくくられています。

「彼女のように、電話を通してしか他人と関わりたくない女のコも少なくない。このタイプの場合、とにかく、マメに電話するのみ!そういうつきあいと、割り切ることが鍵」

この一文にはっとさせられます。これは、現代のSNSにおけるコミュニケーションの歪みや、希薄な人間関係の原型だったのではないでしょうか。顔を合わせず、声だけで繋がる関係性の中に、ある種の安らぎや居場所を見出していた人が、当時から確実に存在していたのです。

あの頃の熱狂を、もう一度その手に。

スマホもSNSもなかった時代。電話線一本で繋がっていた熱狂と、その裏にあった孤独の空気感を、当時の雑誌や作品から感じてみませんか。ページをめくれば、あの頃のザラついた空気が蘇ってくるはずです。

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まとめ:僕らが失った(?)アナログな熱

現代の視点から見れば、テレクラはあまりに非効率で、いびつな文化だったかもしれません。でも、そこには確かに、声だけを頼りに相手の心を手繰り寄せるという、ある種のロマンとスキルが求められる世界がありました。

プロフィールをスワイプし、効率的に「正解」を探す現代。それはそれで合理的ですが、あの頃の、相手がどんな顔かもわからないドキドキ感や、会うまでの想像が膨らむ時間、そしてくだらない駆け引きの中にあった「熱」は、もしかしたら僕らがどこかに置き忘れてきたものなのかもしれません。

あなたの家の押し入れにも、そんな時代の空気が詰まった雑誌が眠っていませんか?

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