【俺たちの過ち】『ときメモ』をエロゲーと勘違いしてた放課後。本当は、伝説の樹の下で青春がしたかった。

はじめに:ブラウン管の向こうに「本当の青春」があった

「『ときメモ』? あー、なんかエロいゲームだろ?」

1995年、僕らの教室の空気はそんな言葉で満ちていた。ファミ通やプレステマガジンを回し読みしながら、知ったかぶった顔でそう嘯(うそぶ)く。本当は、喉から手が出るほどやってみたかったくせに。PCエンジン版で巻き起こっていた熱狂の渦を、僕らは横目で見て見ぬふりをしていたんだ。

学校で『ときメモ』の話をしようものなら、「うわ、あいつギャルゲーやってるぜ」と笑われる。そんな子供じみたプライドが邪魔をして、素直に「藤崎詩織って可愛いよな」と言えなかった、あの頃の自分を殴ってやりたい。

今回は、そんな僕らの“過ち”と“憧れ”が詰まった、プレイステーション版『ときめきメモリアル ~forever with you~』発売直前の、あの熱すぎる時代の雑誌記事を一緒に紐解いていこう。

雑誌が煽る!限定版争奪戦と「徹夜」の覚悟

当時のゲーム雑誌を開くと、まず目に飛び込んでくるのが読者リクエストランキング。そこでは常に『ときメモ』がトップ争いを演じていた。PCエンジンで既に伝説となっていたこのゲームが、次世代機プレイステーションでどう生まれ変わるのか。期待はまさに最高潮だった。

特に狂騒を極めたのが、オリジナルマウスとマウスパッド2枚が同梱された「限定版(9,800円)」の存在だ。編集部の記事も、僕らの心をこれでもかと煽り立てる。

「初回限定販売なので買い逃したら一生後悔するぞ。店によっては予約がすでに締め切られた所もあるので、予約できなかったら徹夜してお店の前で並ぶしかない」

「一生後悔」「徹夜」。なんて甘美で、絶望的な響きだろう。ゲームを手に入れるという行為が、一大イベントであり、冒険だった時代の象徴だ。

PS版で“究極”に進化した仮想高校生活

僕らがただ熱狂していたのは、限定版の響きだけじゃない。プレイステーションという新しいハードで描かれる「きらめき高校での3年間」が、とんでもない進化を遂げているという情報に胸を躍らせていた。

  • アニメで動くオープニング: 金月真美さんが歌うテーマ曲「ときめき」をバックに、アニメーションで動く詩織ちゃん。雑誌には「PC版との大きな変化に驚かされるはずだ」と書かれていたが、そんなレベルじゃなかった。魂を鷲掴みにされたんだ。
  • 部屋にマスコットが置ける!: PS版からの新機能。自分の部屋に、好きな女の子の3頭身マスコットを置ける。「目標にしている女の子を置いておけば、ますますやる気がでるぞ」という一文に、「コナミ、わかってるじゃねぇか…」と何度頷いたことか。
  • 終わらない文化祭: 部活ごとの出展イベントを全部見るだけで「単純計算で12回のプレイ回数が必要」。読者投稿欄には「全員のエンディングを見るために徹夜の予感が…」という、悲鳴のような喜びの声が溢れていた。

画面の向こうだけじゃなかった熱狂

このムーブメントは、ゲームの中だけに留まらなかった。幕張メッセで開催された「東京おもちゃショー」のコナミブースは、まさにカオスと熱気の坩堝(るつぼ)だったらしい。

ラジオ番組のパーソナリティ、丹下桜さん(隠しキャラ!)や虹野沙希役の菅原祥子さんが登場するだけでも事件なのに、なぜか「現役の女子校生8人」がゲストに。リアルな女子高生の生態トークで会場を「恐怖のズンドコ」に陥れたという記述には、時代を感じずにはいられない。

しかし、レポートはこう締め括られている。「菅原祥子様の天使の歌声&丹下桜様のスマイルで、我々は平常心を取り戻したのであった」と。…うん、それでこそ俺たちの90年代だ。

ドット絵の君に、本気で恋をした。~珠玉のセリフとキャプション集~

そして何より、僕らの心を掴んで離さなかったのは、そこに生きる彼女たちの存在そのものだった。当時の雑誌に掲載された、ライターたちの愛が爆発したキャプションと共に振り返ってみよう。

藤崎詩織

  • セリフ:「それじゃ頑張ってね」「絶叫マシーン、ビビールに乗ろう。」
  • キャプション:「浴衣姿の君のほうが綺麗だぜ」「すらっと伸びた長い足の脚線美にみとれちゃう。早くこの思いを君に打ち明けられたら・・・」

虹野沙希

  • セリフ:「今日も根性あるのみよ」「ずっと風邪ひいていたいな・・・。」
  • キャプション:「風邪を引いて苦しそうな沙希ちゃん。僕にうつして早くよくなってね」「夏少女NO1だ」

片桐彩子

  • セリフ:「How are you調子はどう?」「オーザッツビューティフル。素敵ね。」
  • キャプション:「彼女のペースにハマルの一興かも」

古式ゆかり

  • セリフ:「では、始めましょう」「こういう所を散策するのって、気持ちがいいですねぇ。」
  • キャプション:「線香花火なんかでゆっくりと遊びたいね」

…キリがない。一人ひとりのキャラクターに、開発者だけでなく、雑誌ライター、そして僕らプレイヤーの熱い想いが注ぎ込まれていた。だからこそ、彼女たちはただのドット絵じゃなく、僕らにとって「本物の」同級生だったんだ。

ブラウン管の中で繰り広げられる3年間の高校生活。パラメータを上げ、デートに誘い、一喜一憂する。すべては卒業式の日、あの伝説の樹の下で、意中の彼女から告白される、その瞬間のために。

あの頃の僕らは、そこに「もうひとつの青春」を見ていた。そして、それは決して「エロゲー」なんかじゃなかった。紛れもなく、純粋な憧れそのものだったんだ。

あの頃の熱狂をもう一度、手元に。

ブラウン管の向こうにあった、あのまぶしい青春。
もう一度、伝説の樹の下で彼女に会ってみませんか?
あの頃のドキドキを、今、あなたの手元に。

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まとめ

今思えば、なぜ僕らは『ときメモ』に熱中していることを隠そうとしたのだろう。それはきっと、あまりにも本気だったからだ。本気で悩み、本気で恋をしていたから、誰かに茶化されるのが怖かったのかもしれない。

この記事を読んで、少しでも胸が熱くなったなら、あなたは紛れもなく「同志」だ。

「エロゲーだろ」と強がっていたあの頃の自分に、そして同じように感じていた全国の友人たちに、今なら胸を張って言える。
『ときめきメモリアル』は、俺たちが過ごしたかった、もうひとつの青春そのものだったんだ、と。

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1990-00年代を中心にゲーム、音楽、テレビの記憶を当時の技術背景や世相から深掘りします。失われゆく「あの頃」の手触りをデジタルで保存中。ブログでは書けない濃密な裏話を有料記事で公開しています。ブログ:

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