僕らが“未来”に接続した夜。PHSの32kbpsとテレホーダイを待った90年代インターネット回顧録

「ピーガラガラ…」あの音は、未来への接続音だった

今、この記事を読んでいるあなたの手元にあるのは、おそらくスマートフォンだろう。5G回線に繋がり、高画質の動画をストレスなく再生できるのが当たり前の世界。でも、ほんの25年ほど前、僕らはまったく違う世界に生きていた。

夜23時になると、家族に「電話使うなよ!」と釘を刺し、パソコンと電話回線を繋ぐ。受話器から聞こえる「ピーガラガラ…」というあの音。それは、未知の世界への扉を開くための、神聖な儀式のようなものだった。そう、インターネットは「繋ぎにいく」特別な場所だったんだ。

革命的スピード!PHS「32kbps」がくれた小さな未来

1997年。僕らの世界の通信速度は、劇的な進化を遂げた。それまでの携帯電話の通信速度9.6Kbpsに対し、PHSが「32Kbps」という、まさに“驚異的”なスピードを実現したんだ。

…いや、今の若い世代に「32キロビット毎秒です!」と胸を張っても「え、メガじゃなくて?ギガじゃなくて?」と首を傾げられるだけだろう。でも、当時の僕らにとって、それは未来そのものだった。

雑誌には「PHSでビジネスもプライベートも、スマートにカッコよくモバイルしてしまおう!」なんて見出しが躍っていた。出張先のビジネスマンがノートパソコンとPHSを繋いで会社にFAXを送ったり、会議中に「最大20文字」のPメールでこっそりデートの約束をしたりするのが、最先端のライフスタイルとして紹介されていた。

正直、kbpsって単位の意味なんてよく分かってなかった。雑誌の広告に載ってる通信の仕組みもチンプンカンプン。だけど、「これで、家の外でもインターネットができるのかも!」という漠然とした興奮だけが、僕の胸を熱くさせていた。

黒船襲来!「AOL」が運んできた“向こう側”の香り

同じく1997年、インターネットの世界に黒船がやってきた。世界最大のオンライン・サービス「AOL(アメリカ・オンライン)」の日本上陸だ。

月額料金を払えば、インターネットに接続できるだけでなく、ディズニーやMTVといった海外のコンテンツにも簡単にアクセスできる。何より僕らが夢中になったのは、「チャット」という魔法だった。「もしかしたら、マイケル・ジャクソンとリアルタイムで話せるかもしれない!」なんて、本気で信じていたんだ。

まぁ、開始当初はWindows専用で、Macユーザーだった友人が悔しがっていたのも、今となってはいい思い出だ。

2分更新の銀座に熱狂!「覗き穴」と牧歌的なネットの世界

当時のインターネットの楽しみ方のひとつに、「ライブカメラ」があった。当時は「ピープホール(覗き穴)」なんて呼ばれていて、そのネーミングセンスにも時代を感じる。

中でも有名だったのが『銀座NOW!』というサイト。銀座4丁目の交差点の様子が、なんと「2分ごと」に自動更新される。たったそれだけのことなのに、僕らは画面に映る小さな荒い画像を見つめながら、「すげぇ…今、この瞬間の銀座がここにある…」と、空間を超えた感動に打ち震えていた。

そして、当時の人気サイトランキングが、また最高に“エモい”んだ。

  • 1位:ズバリ占う貴方の運勢
  • 2位:Yahoo! JAPAN
  • 3位:種村家の妊娠物語/育児物語
  • 5位:特設!FINAL FANTASY VIIのお部屋
  • 8位:Superたまごっち

巨大検索エンジンと、一個人の育児日記やゲームのファンサイトが同列に並ぶ、このカオスで温かい雰囲気。誰もが手探りで、自分の好きなものを発信していた、あの牧歌的なインターネットの世界が、僕はたまらなく好きだった。

あの頃の熱狂をもう一度、手元に。

画面の向こうの未知なる世界に胸を躍らせた記憶。
そんな90年代の空気感を象徴するアイテムを、今もう一度、その手に取ってみませんか。

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まとめ:繋がるまでの“余白”にあった、かけがえのないロマン

PHSの32Kbpsに熱狂してから、四半世紀以上が過ぎた。通信速度は文字通り何百万倍にもなり、僕らはいつでもどこでも、世界中の情報に瞬時にアクセスできるようになった。

便利になった。快適になった。でも、時々思い出してしまうんだ。テレホーダイの時間を待ちわびたあの高揚感を。繋がるまでの数分間、胸をときめかせたあの時間を。2分に1回しか更新されない銀座の風景に、果てしないロマンを感じていた、あの頃の自分を。

テクノロジーが進化の過程で置いてきてしまった、あの“余白”の時間にこそ、僕らの世代だけが知る、かけがえのない宝物が眠っているのかもしれない。

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時の管理者|note
1990-00年代を中心にゲーム、音楽、テレビの記憶を当時の技術背景や世相から深掘りします。失われゆく「あの頃」の手触りをデジタルで保存中。ブログでは書けない濃密な裏話を有料記事で公開しています。ブログ:

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