「日本人には理解不能」― 雑誌が伝えた異次元の衝撃
ゲーム雑誌を食い入るように見ていたあの頃。きらびやかなRPGや格闘ゲームが誌面を飾る中、ひときわ異彩を放っていた一本のゲームがありました。その名は『MYST(ミスト)』。
息をのむほど美しいグラフィックとは裏腹に、記事には「日本人には理解不能な難易度」「さすがにアメゲー」という、子供心に恐怖すら覚える言葉が並んでいたのを今でも覚えています。結局、僕は当時このゲームをプレイする機会に恵まれませんでしたが、誌面の攻略記事を何度も読み返し、その難解な世界に挑むプレイヤーたちの熱狂に思いを馳せていました。
今回は、書庫の奥から発掘した1995年当時の雑誌記事を元に、攻略サイトも動画配信もなかった時代、僕らがどうやってこの理不尽な謎に立ち向かったのか、その記憶の扉を開けてみようと思います。

攻略法なき時代の冒険者たちへ。誌面に残された唯一の道しるべ
当時の雑誌は、まさに冒険者のための唯一の地図でした。『MYST』の攻略記事もまた、Q&A形式で、途方に暮れたプレイヤーに最小限のヒントを与えてくれます。
Q1. ゲームの目的って一体何なの?
ゲーム終了のためには、4つの世界から破れた本のページを島に持ち帰らなくてはならない。でもその前に、まず島の図書館にある本の中に捕らわれている男の話を聞こう。赤い本、青い本と2冊あるので両方聞いておくこと。
そう、このゲームには明確な敵もなければ、派手なアクションもない。ただ、謎と、美しい風景が広がるだけ。捕らわれた兄弟、アクナーとシーラス、どちらを信じるか。この究極の選択から物語は静かに始まります。時間制限もゲームオーバーもない世界で、プレイヤーはただひたすら自分の頭脳と観察力を頼りに島を彷徨うのです。
すべての始まりと終わりの場所「MYST島」
Q2. MYST島では何をすればいいの?
島では、まずいろんな建物の側にあるスイッチをすべて入れる。次に図書館で壁にかかった地図を見て、塔の部分をクリック。これで監視塔を回転させることができるので、何かの建物が見えるように位置を調整。
「まずスイッチをすべて入れる」…言葉にすれば簡単ですが、これが途方もない作業でした。ノーヒントで広大な島を歩き回り、怪しい場所を片っ端からクリックする。監視塔のギミックに気づいた時の「これか!」という閃きは、今のゲームではなかなか味わえない純粋な喜びだったに違いありません。
マルチエンディングの罠、そして真実へ
このゲームがゲーマーの心を掴んで離さなかった理由の一つが、マルチエンディングの存在でした。ただクリアするだけでは終わらない、深い物語がそこにはありました。
Q3. マルチエンディングって本当?
コレは本当。エンディングは全部で4種類もある。(中略)さて、4つのエンディングだけど、白いページを持って緑の本に触る、というのが本当のエンディングで、実は他はすべてバッドエンディングなのだ。
兄弟のどちらかを助ければ、一応のエンディングを迎えることができます。しかし、それは本当の結末ではありませんでした。彼らの警告を「あえて」無視し、物語の深層に隠された「白いページ」を見つけ出すこと。そこに、このゲームの真の目的が隠されていたのです。雑誌の片隅に書かれた「白いページがどこにあるかは、各世界を注意深く歩いていたのなら、もう分かっているハズだ」という一文。この突き放すような物言いこそ、当時のゲーマー魂を燃え上がらせたのです。
チャネルウッドの水力発電ギミック、セレーネの地下迷宮、ストーンシップの巨大なコンパス…。どの世界も理不尽な謎に満ち溢れていましたが、同時に、解き明かした者だけが見ることのできる絶景が待っていました。
- メカニックの世界:エレベーターの上にある本物の回転装置。こんなのわかるか!
- チャネルウッドの世界:水力で動くエレベーター。水道管を辿る地道な作業。
- セレーネの世界:音を頼りに進む地下迷宮。マッピングは必須。
- ストーンシップの世界:バッテリーで電力を復旧させないと真っ暗闇。
誌面に残された断片的な攻略情報と、汚れたベッドの上に無造作に置かれたページの写真。これら一つ一つが、僕らの想像力を掻き立て、未知の世界への冒険へと誘ってくれたのです。
あの頃の熱狂をもう一度、手元に。
攻略サイトを見れば一瞬で答えがわかる今、あの頃のように、一つの謎に何時間も頭を悩ませる贅沢を忘れていませんか。
あの理不尽なまでの達成感を、もう一度味わってみませんか。僕らはもっとずっと自由で、孤独な冒険者だったはずです。
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まとめ
『MYST』が僕らに教えてくれたのは、答えをすぐに見つけられないことの「豊かさ」だったのかもしれません。情報が溢れる現代において、自力で考え、試行錯誤し、そして閃く瞬間の喜びは、何物にも代えがたい体験です。
この記事を読んで、少しでもあの頃の胸の高鳴りを思い出してくれたなら、これほど嬉しいことはありません。あなたの心の中にある「MYST島」は、今でも静かに、あなたの帰りを待っているはずです。

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タイムカプセル:90-00s 深層アーカイブ|時の管理者|note1990年代・2000年代のゲーム、音楽、テレビの記憶を、当時の技術背景や世相から徹底的に深掘りする「時の管理者」による公式マガジンです。ブログ『タイムカプセル:あの頃と今』では書ききれない、より濃密で資料的価値の高いアーカイブ記事をストッ…



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