はじめに:びろーん、くるくる、再生ボタン
「カセットテープ」と聞いて、あなたの脳裏に浮かぶのはどんな光景ですか?
僕の場合は、親父が運転する車のカーステレオから流れていた長渕剛の『JAPAN』。それから、誕生日か何かで買ってもらった『恐竜戦隊ジュウレンジャー』の主題歌が入った歌のテープ。ラジカセで聴きすぎて、びろーんと伸びてしまったテープを、泣きそうになりながら鉛筆でくるくる巻き直した、あの独特の感触…今でも指先が覚えています。

正直に言うと、僕は当時、友達がやっていたようなFMラジオの番組を録音したり、CDからお気に入りの曲だけを集めた「俺のベスト」を作ったりはしませんでした。でも、最近になって当時の雑誌を整理していたら、そこには僕らが単なる録音メディアとしてではなく、自己表現のキャンバスとしてカセットテープに情熱を注いでいた時代の、とんでもない熱気が真空パックされていたんです。
90年代、カセットテープは俺たちのプロフィールだった
1994年頃。CDが普及し、8cmのCDシングルを買い集めて、自分だけのベスト盤を作る「集め録り」が全盛期でした。カセットテープは、ただ音を記録するだけじゃない。インデックスカードにどんな文字を書き込むか、ケースにどんなシールを貼るか、それそのものが持ち主のセンスを示す、いわば「音楽のプロフィール帳」だったのです。

「ダサイのは、入れてやんないよ。」- TDK『ディスク・ジャックDJ』の衝撃
この挑戦的なキャッチコピー、覚えてますか? TDKが放った『ディスク・ジャックDJ』シリーズは、まさに「集め録り」世代の心を鷲掴みにしました。
さあ、好きな曲を、がんがん入れよう。TDK [ディスク・ジャックDJ]、誕生。
ただのテープじゃありません。20曲分のタイトルが書き込めるインデックスカードや、オリジナルテープ作りに「めっちゃ便利」なタイトルシールが付属。音質も「ストレートな音DJ1(ノーマル)」「クリアーな音DJ2(ハイポジ)」「パワフルな音DJ METAL(メタル)」と、録音したい音楽のジャンルに合わせて選ぶこだわりよう。すべてが、自分だけの最強の一本を作るために設計されていました。
「曲聴いてタイトルがわりに一句かな」- マクセル『CD’s』の”楽がき”カルチャー
一方、日立マクセルは「楽がき」という新しい文化を提案します。それが『CD’s』シリーズでした。
君はもう、『楽がきタイトルカセット』を使っているか?ラベルを貼らずに、直接タイトルを書き込めるのが、大好評!
カセット本体に設けられた「楽がきタイトルスペース!! さあ、ドーゾ。」の文字。ここに、曲名だけでなく、その時の気分やメッセージ、自作のポエム(!)なんかを書き込むのが流行りました。雑誌に載っていた例文が、また時代を感じさせて最高なんです。
- 受験生でる単片手にロケンロー!
- 外タレが何を言ってもエイと応え
- 新曲はテープに録ってカラオケへ
このゆるいノリ、伝わりますか? 音楽を聴きながら思いついた言葉を書き留める。まさに、インスタのストーリーに文字を乗せる感覚の元祖だったのかもしれません。

「音もいいけど、ケースがスゴイ。」- AXIAのクールな世界観
音質やギミックだけでなく、「見た目の格好良さ」で勝負してきたのが富士フイルムの『AXIA』です。
ちがいはキズつきにくい黒のカセットケース。

半透明が主流だったカセットケースに、傷が目立ちにくい「黒」を採用した『AXIA K』。このソリッドでクールな佇まいは、周りとちょっと差をつけたい層にぶっ刺さりました。カセットテープを持ち歩くことがステータスだったからこそ、ケースのタフさやデザインは重要な要素だったんですね。アイドルの「マキちゃん自筆サイン入りテレカ」プレゼントなんてキャンペーンもやっていて、当時の熱狂ぶりがうかがえます。
あの頃、カセットに吹き込んだJ-POP、ドライブで聴いた名盤。
あの熱狂をもう一度、手元に置いてみませんか?
便利なストリーミングもいいけど、モノとして音楽を持つ喜びは、やっぱり特別です。
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まとめ:僕らの指紋がついたプレイリスト
今や音楽はデータになり、指先一つでプレイリストが作られ、一瞬で世界中の人と共有できる時代です。それは信じられないほど便利で、素晴らしいこと。
でも、CDレンタル屋で何時間も悩み、時間を計算しながら曲順を考え、インデックスに小さな文字を書き込み、A面からB面に切り替わるタイミングにドキドキした…あのカセットテープには、今のプレイリストにはない「重み」と「体温」が確かにありました。
この記事を読んで、押し入れの奥で眠っているカセットテープの入ったダンボールを、ちょっと開けてみたくなったなら幸いです。





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