あの頃、僕らは松本人志という「天才」を必死で理解しようとしていた|95年雑誌『ポポロ』をめくって

はじめに:押入れから出てきた、90年代の「熱」

先日、実家の押入れを整理していたら、段ボール箱いっぱいの古い雑誌が出てきた。その中の一冊、1995年発行の『ポポロ』を手に取った瞬間、指先にあの頃のザラついた熱が蘇ってきた。ページをめくると、そこにいたのは、僕らの世代にとって神様であり、理解不能な天才であり、少し怖い存在だった男――松本人志その人だった。

物心ついた頃には、松ちゃんはもう手の届かないスターだった。学校に行けば「昨日のごっつ観た?」が挨拶がわり。彼のボソッとした一言のワードセンスに、男子はみんな痺れ、憧れた。そんな時代の空気が、この雑誌には真空パックされていたんだ。

「センスのないヤツは読まんでええ」孤高のカリスマだった松本人志

この記事は、エッセイ集『遺書』が150万部を突破したことを記念した特集だった。今じゃ信じられないかもしれないが、当時のお笑い芸人の本が150万部だ。それ自体が異常な熱狂の証だった。

誌面には、彼の強烈な言葉が並ぶ。

  • 「オレの笑いを理解するには、ある程度センスとオツムが必要だ」
  • 「この世は嫌われてなんぼ。同情なんてフニャフニャチンポだ」
  • 「オレについてこれるヤツだけでいいんだもんね」

そう、これだ。この「分かるヤツだけ分かればええ」というスタンス。テレビでは見せない思考の断片に触れたくて、僕らは『遺書』を教科書のように読んだ。理解できたかは分からない。でも、理解しようとすることが、当時の僕らにとって一つのステータスだったんだ。

ダウンタウンファミリーという「軍団」の熱気

雑誌は、松本人志を核とした「ダウンタウンファミリー」の存在にも触れている。今田耕司、東野幸治、木村祐一…。彼らはただの共演者じゃなく、松本人志という才能に心酔し、集まった「ユニット」だと分析されている。

「松ちゃんは怖い存在」だからこそ、その輪の中に入ることが許された芸人たちは特別な存在に見えた。あの頃、松ちゃんが笑うと、スタジオ中、いやテレビの前の僕らまで釣られて笑ってしまう不思議な引力があった。みんながやっていた、笑う時に顔をそむける仕草も、元をたどれば松ちゃんに行き着くのかもしれない。

近寄りがたい「天才」と親しみやすい「浜ちゃん」

面白いのが、誌面のバレンタイン企画のアンケート結果だ。

バレンタインを一緒に過ごしたい男BEST30

  • 4位 浜田雅功
  • 16位 松本人志

この差!編集部は「浜ちゃんは気軽に声をかけてくれそうだが、松ちゃんは尊敬から近寄りがたい」と書いている。まさにその通りだった。「面白くて思い出に残る日を過ごせそう」だけど、いざ目の前にしたら何も話せないだろうな、という畏怖の念。それが松本人志という存在だった。

でも、やっぱり浜ちゃんがいてこその松本人志なんだよな。『Wow Wow tonight』で突然入る「ハマダブサイク」のシャウトも、『チキンライス』の感動的な歌詞も、この二人にしか作れない世界だった。

そして202x年。カリスマはどこへ向かったのか?

ページを閉じ、現在の松本人志に思いを馳せる。ワイドショーでコメントし、M-1グランプリで若者を審査する姿。初期のM-1で、島田紳助の隣に座っていた時のあのピリつくような緊張感を知っている世代からすると、今の姿は少し不思議に映る。

「分かるヤツだけ」とファンを選別していた男が、誰にでも分かる言葉で語るようになった。それは円熟なのか、変化なのか。正直、彼の監督した映画は一本も観ていない。かつてのように、全てを追いかける熱量はもう僕にはないのかもしれない。

それでも、この雑誌が証明しているように、90年代の日本に、松本人志という規格外の天才が放った熱は本物だった。僕らの青春は、彼の笑いと共にあった。その記憶だけで、なんだか少し誇らしい気持ちになるんだ。

あの頃の熱狂をもう一度、手元に。
必死で理解しようとした天才の頭の中、ブラウン管の向こうにあったシュールな笑いのカケラを、今こそ手に取ってみませんか。

🔍 「遺書 松本人志」を各ショップで探す

🔍 「寸止め海峡」を各ショップで探す

🔍 「ダウンタウンのごっつええ感じ DVD」を各ショップで探す

まとめ:僕らの心に刻まれた「遺書」

今回、古い雑誌をめくったことで、忘れていた感情が鮮やかに蘇ってきた。松本人志という存在が、単なるお笑い芸人ではなく、一つの「文化」であり「現象」だった時代。彼の言葉に痺れ、彼の笑いに救われた僕らがいた。

時代は変わり、彼も僕らも変わった。でも、あの頃の圧倒的なカリスマ性と、チリチリするような緊張感は、確かに僕らの青春の一部として、今も心に深く刻まれている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました