ザワついた冬の日曜日、ブラウン管の向こうの英雄
週末になると、親父が競馬新聞を広げて赤ペンで何やら書き込んでいる。その光景が、僕にとっての「休日」の合図だった。2001年の冬、テレビの向こう側で日本中を熱狂させていた一頭の馬がいた。その名は、テイエムオペラオー。
当時、僕はまだ競馬の奥深さなんて分からなかったけど、父が「オペラオーはすごいぞ」と呟くのを聞いて、ただならぬ存在であることは感じていた。それに、競馬ゲームをやれば、その強さは一目瞭然。パラメータがめちゃくちゃ高くて、友達との対戦では「オペラオー禁止な!」なんてローカルルールが生まれるほど(笑)。ナリタトップロード、アドマイヤベガ…競走馬の名前って、どうしてこうも心に響くんだろう。

先日、書庫の奥から出てきた2001年末の『週刊プレイボーイ』をめくっていたら、あの頃の興奮が鮮やかに蘇ってきた。そこには、世紀末覇王のラストランとなる有馬記念を特集した、熱気あふれる記事が掲載されていたんだ。
皇帝を超えろ!GI・8冠への期待と不安
記事のタイトルからして、もう熱い。「テイエムオペラオーの偉業達成か、最強3歳馬の世代交代か」。見出しだけでご飯3杯いける。
この有馬記念は、オペラオーにとって引退レース。勝てば、あの皇帝シンボリルドルフの持つGI・7勝の記録を塗り替える「GI・8冠」という前人未到の偉業がかかっていた。まさに伝説が生まれようとする瞬間だ。
しかし、記事によれば世間の評価は揺れていたらしい。前年の圧倒的な強さに陰りが見え、「もはや力は残されていないのか!?」なんて限界説まで囁かれていたという。それでも専門家たちは「能力はキープしている」「勝ちにいって足元をすくわれただけ」と本命視。この期待と不安が入り混じる空気感、これこそグランプリの醍醐味だよな。

立ちはだかる「最強の世代」
オペラオーの前に立ちはだかったのが、とんでもなくハイレベルだと言われた3歳馬たち。ジャパンカップを制したジャングルポケットを筆頭に、まさに「最強世代」が世代交代を突きつけにきていた。
誌面では、過去のデータから「3歳馬有利」という情報も紹介されている。特に注目されていたのが、この2頭だ。
- エアエミネム:夏の札幌記念でジャングルポケットを撃破。「好位から確実に伸びる脚。大きな不安材料は見当たらない」と大絶賛。
- マンハッタンカフェ:菊花賞を制し、急成長中の上がり馬。「追い切りはすごい迫力でした」という記者のコメントが、その勢いを物語っている。
絶対王者のラストランに、虎視眈々と牙を研ぐ若き才能たち。この構図、少年マンガの王道すぎて、胸が熱くならないわけがない。
週プレの結論は「オペラオーを買い!」だった
専門家の意見も真っ二つに割れる大混戦。そんな中、週刊プレイボーイが下した結論は、実に清々しいものだった。
「オペラオー買い!」
その理由が、最高に“エモい”んだ。
「だって、この目で『オペラオーの皇帝ルドルフ超え』を見てみたいし、それでこそ『今年も有馬はすごかった』という伝説が続いていくからだ。ここはひとつ、史上最強馬の称号をかけたオペラオーのラストランに賭けてみよう」
データや理屈じゃない。「伝説を目撃したい」という、競馬ファンの純粋なロマン。これだよ、これ。僕たちが雑誌に求めていたのは、こういう体温のある言葉だったんだよな。ブラウン管の前で親父と固唾を飲んで見守った、あの日の空気を思い出すよ。
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まとめ
結局、このレースを制したのは3歳のマンハッタンカフェだった。テイエムオペラオーは5着に敗れ、GI・8冠の夢は叶わなかった。でも、雑誌が賭けた「ロマン」は、決して色褪せることはない。
ページをめくるたびにインクの匂いと共に蘇る、あの時代の熱気。結果が分かっていても、そのプロセスにあったドラマに僕たちは心を揺さぶられる。これからも、そんな雑誌文化の“魂”を、この場所で少しずつアーカイブしていきたいと思う。



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