僕らを救ったのは「童貞」だった。GOING STEADYが駆け抜けた性春の記録

はじめに:四畳半に鳴り響いた「童貞」という名の革命

2000年代の初頭、僕らはみんな、どうしようもなく青くて、どうしようもなく満たされない何かを抱えていた。狭い部屋で、雑誌をめくりながら東京に憧れていた僕にとって、イヤホンから飛び込んできたGOING STEADY(ゴイステ)の音楽は、まさに事件だった。峯田和伸の少し訛りのあるボーカルが「若者よ、童貞を誇れ!!!!!」と叫んだ瞬間、世界は変わった。それは、僕らの「性春」を丸ごと肯定してくれる、革命の狼煙だったんだ。

今でこそ笑い話にできるかもしれないが、当時、特に男子にとって「童貞」であることは、どこか引け目を感じる、隠すべきことだった。そんな空気を、ゴイステは真正面からぶち壊した。2002年に放たれたシングル『童貞ソー・ヤング』は、僕らの心のど真ん中に突き刺さった。

当時の雑誌コラムに「絶望的な末期童貞であったオイラがもし当時聴いていたら、一生このバンドについていこうと思ったはず」と書かれていたが、これは決して大袈裟な表現じゃない。この曲を聴いて、救われたキッズは数え切れないほどいたはずだ。「ボクはいつも童貞で、オナニーばっかりして、四畳半のアパートでひざを抱えてた頃の自分に戻ってしまう」――そんな痛々しいほどのリアルさこそが、僕らの胸を打った。

「童貞ソー・ヤング」が僕らを解放した日

カッコ悪くて、最高にカッコいい「ストリートロック」

ゴイステの魅力は、その徹底した「カッコつけなさ」にあった。アルバム『さくらの唄』がオリコン初登場10位という快挙を成し遂げても、彼らは雑誌のインタビューでこう本気で嘆いていた。

「良いもの作った自信はあるんですよ。でも、いつモテるんですか? どうやったら・・・・・・全然、何にもないですよ!!!」

別れた彼女の実名をそのまま『佳代』という曲のタイトルにしてしまう。そんな不器用で、剥き出しの感情こそが彼らの真骨頂だった。彼らは自らの音楽を「ストリートを真っ直ぐ行ったところにある大きなビルの中で作られた音楽とは違う」「やってる人がカッコ悪くても、カッコいい音楽」と語った。その言葉通り、彼らは着飾ることなく、等身大の姿で僕らの心を鷲掴みにしたんだ。

カッコ悪くて、最高にカッコいい「ストリートロック」

鼻水と血と汗とヨダレ。汁ダラダラのライブ名言集

ライブでのゴイステは、まさに初期衝動の塊だった。ステージででんぐり返し、ドラムセットに突っ込み、ギターにぶつかって「鼻水と血と汗とヨダレでね。汁ダラダラ」になる。そんな峯田の姿は、僕らが内に秘めていた爆発寸前のエネルギーそのものだった。

当時の雑誌に残された言葉の数々が、その熱狂を物語っている。

  • 「一刻も早く家帰って、な、彼女の寝てる脇で腕枕の1つや2つしてやれ!!」
  • 「うちらは、もう、“ミネタ歌うな”って誰もが言っても歌いに来っから!!」
  • 「いつの日か、うちらが心から笑えますように」
  • 「永遠にうちらは続かないかもしれないけど、永遠にこの気持ちだけは持っていたいんだ」
  • 「星よ、星よ、星たちよ。まるでアンタたちみてーに、うちらも輝いてると思うんだけどなあ」

これらの言葉は、ただのMCじゃない。僕らの心に刻まれた、永遠のアンセムだ。

鼻水と血と汗とヨダレ。汁ダラダラのライブ名言集

熱狂の果て、そして永遠になった初期衝動

ファンが「車も家も金の指輪も何もないけど、でも、ボクにはゴイステのCDがある。これだけでスッゲー裕福な気分」と語るほど、彼らの存在は僕らの全てだった。だからこそ、2003年1月15日の突然の解散発表は、あまりにも衝撃的だった。

実質的なラストシングルとなった『若者たち/夜王子と月の姫』で、彼らは「最後は笑って死ねるような、そんな歌が歌いたい」と歌った。まるで自らの終わりを予見していたかのような、恐ろしいほど美しい偶然。彼らが駆け抜けた時間はあまりに短かった。だけど、僕らの心に刻み込まれたドラムの「童貞ビート」と、あのどうしようもない青春の熱量は、20年以上経った今でも、決して色褪せることはない。

熱狂の果て、そして永遠になった初期衝動

あの頃の熱狂をもう一度、手元に。

配信で簡単に音楽が聴ける時代だからこそ、ジャケットを手に取り、歌詞カードを眺めながら聴く一枚には特別な価値がある。あの頃のザラザラした感情を、もう一度フィジカルで感じてみないか?

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まとめ

GOING STEADYは単なるバンドではなかった。それは一つの「現象」であり、僕らが通り過ぎた「時代」そのものだった。彼らが肯定してくれたのは「童貞」だけじゃない。カッコ悪くて、不器用で、どうしようもなかったあの頃の自分自身を、丸ごと抱きしめてくれたんだ。だから僕らは、今でもゴイステを聴くと、あの四畳半の部屋に戻れるのかもしれない。


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1990-00年代を中心にゲーム、音楽、テレビの記憶を当時の技術背景や世相から深掘りします。失われゆく「あの頃」の手触りをデジタルで保存中。ブログでは書けない濃密な裏話を有料記事で公開しています。ブログ:

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